相続と一口に言っても

かつての相続は、「家督相続」と言った言葉もあったように、一家の長男が財産・負債全てについて当然に受け継ぐものでした。


しかし、現代では民法において法定相続分が明確に定められているばかりでなく、話し合いによる財産の分割方法や、万が一争いになった際における対処方法についてまで、具体的に定められており、かつての相続とは大きく変化しています。


また、税務上の側面が絡むこともあり、相続と言ってもどうしたら良いのか、すぐに判断することができないのが現状です。


実際に遺産分割協議書を作成するにあたっては、戸籍関係の証明書を取りそろえ、相続人を確定するところから始めなければなりません。
同時に、相続財産を明確にするための各種証明書も必要となります。 

 

相続が「争続」となる現代

現代の相続はかつての相続と大きく変化していると申し上げましたが、これは制度そのものが変革した、と言うだけではありません。


現代における相続では、以前では考えられなかった多くの問題が生じています。
具体的に以下の事例で考えてみます。


  • 妻とは事実上、離婚している状態における内縁の妻の相続分
  • 長年父の療養看護に努めていた長女と、海外に留学していた次女の相続分
  • 子供はいないが長年仲睦まじく過ごしてきた夫婦。財産は一生懸命頑張って働いて手に入れた土地建物だけ。夫が亡くなった時における妻と夫の兄弟姉妹の相続分

  • においては残念ながら内縁の妻における法定相続分はありません。
  • では法律上はあくまでも相続分は平等、2分の1ずつになります。
  • は夫の兄弟姉妹にも相続分があることになり、土地建物の持ち分が発生します。

いずれのケースでも、少子超高齢化が進む現代においては、決して珍しい事例ではありません。

 

高まる遺言書の必要性

遺言書と聞くと、真っ先に「遺書」を連想してしまい、とかくマイナスなイメージがあるかと思います。
しかし、現実は遺言書と「遺書」は全く異なるものです。
遺言書は単なる法的書類と言うだけでなく、残された方達が円満に生活を送ることができるよう、家族への強い愛情の想いが込められた、最期のメッセージです。


事実、前述した①~③のいずれのケースにおいても、遺言書を残すことで本当の意味での平等な相続を行うことが可能となります。
内縁の妻にも相続させることができ(正確には遺贈と言います。)、療養看護を努めた長女に手厚く相続させることもできます。
また、夫の兄弟姉妹に相続をさせることなく、妻一人で全ての相続をさせることも可能です。


ただし、遺言書の効力が発揮されるのは、遺言した方が亡くなってからです。
遺言書の内容が明らかにされる時には、それが本当に遺言した方の遺志を反映したものかどうか、既に判断する術が一切ありません。
その為、遺言書の様式は法律によって厳格に定められており、一つ間違えば遺言書自体が無効とされてしまいます。


一般に遺言書には以下の3つの種類があります。


  • 自筆証書遺言
    これは遺言書の全てを自筆で記載、作成するものです。
    パソコン等による作成は認められません。
    遺言書の中では一番簡単に作成することができる半面、無効となりやすい遺言書でもあります。
    遺言された方が亡くなった後、家庭裁判所にて法律上有効かどうかの確認作業が必要です。(これを検認と言います。)

  • 公正証書遺言
    公証役場にて公証人に作成してもらう遺言書です。
    証人二人と共に公証役場に出頭し、口頭で遺言内容を公証人に伝え、公証人が書面を作成します。
    その後、公証人は遺言内容を本人と証人に読み聞かせて確認をとり、公正証書として遺言書を取りまとめます。

    公証人が内容を証明するため、自筆証書遺言のような家庭裁判所の検認作業は不要です。

  • 秘密証書遺言
    これは作成した遺言書を公証役場にて「確かに自分の遺言書である」旨、口頭で述べることで、公証人に自分の遺言書であることを公証してもらうものです。
    遺言書の存在は明らかにしたい一方で、遺言書の内容を開封されるまで誰にも知られたくない時に利用します。

           
     ただし、公証人は遺言書の内容まで証明するわけではありません。
   したがって、自筆証書遺言同様に家庭裁判所での検認作業は必要となります。


以上が遺言書の種別と大まかな概要になります。 
遺言書を作成する場合は、種別ごとの書式を熟知された上で対応する必要があります。