労働基準監督署が臨検調査を行った際、法律違反に対する事案に対し、是正を勧告することがあります。
労働基準監督署における是正勧告の内容は、労働基準法違反や労働安全衛生法違反等が主な場合がほとんどですが、中でも労働時間の適正管理や、時間外労働の割増賃金の未払いと言ったことは、多くの企業で指摘されています。

しかし、実際に労働基準監督官が指摘するのは、「時間外労働の割増賃金が適正に計算されていない」「実際に支給がされていない」という点だけです。
そもそも労働基準監督官に未払い賃金の支払いを命じる権限はありません。

賃金の未払い分について、支払いを命じることができるのは裁判所だけです。
労働基準監督官自身が、未払い賃金の遡及是正を命じることはできません。

それでは、未払い賃金に対して、労働基準監督署から是正勧告を受けた場合、事業主は権限が無いものとして勧告を無視してしまって良いのでしょうか?

労働基準監督署は、事業主に対して労働時間数等を自主的に確認するよう、指導を行った結果として法律違反が確認された場合は、行政指導として勧告を行うことになります。
この行政指導には法的な根拠(厚生労働省設置法第4条第1項第41号)があり、勧告を無視した場合、最悪のケースでは書類送検と言った事例にまで発展しかねません。

確かに、労働基準監督官には未払い賃金を強制徴収する権限はありません。
しかし、行政指導自体に法的根拠がある以上、是正勧告には応じる義務があるのです。