会社が行う人事異動には色々あります。昇降格や給与改定、支店変更や部署異動等々。

これらはすべて、就業規則と雇用契約書に基づいて行われる、会社の「人事権の具体化」として行われます。

 

難しい表現をしてしまいましたが、簡単に言ってしまえば「会社が社員を評価する」と「会社が適材適所に社員を配置する」の二点に人事異動の目的は集約できるでしょう。

ただ、ここ最近になって、人事異動に異なる意味合いが持たれるようになってきました。具体的には、辞めて頂きたい社員の退職を自発的に促すことを目的として、人事異動が行われるケースが増えてきているのです。

 

会社側から一方的に雇用契約を解約する行為を「解雇」と言いますが、実際に解雇を行う為には要件があります。御存知の方も多いかとは思いますが、確認の意味を含めてご案内致します。

①就業規則等で解雇事由が明確に定められていること

②定められている解雇事由が、社会通念上相当なものと認められること

③会社側が雇用継続を維持する為の努力をしたが、それでも解雇がやむを得ないと認められる相当の事由があること

④解雇予告を行うか、予告手当を支払うこと

 

この中でも注意しなければならないのは②と③です。①と④については、法律上の必須事項でもあるので、この要件を満たしていない段階で解雇は不当なものになります。

②と③に関しては、個々のケースごとでその適否を判断しなければなりません。いわゆる労働争議と言う訳です。

 

様々な理由から解雇に至るケースがありますが、現実には解雇を行うのは難しくなっています。そこで人事異動を通じて、自発的に退職を促すようになってきている訳です。

 

営業で期待していた結果を出せなかった社員に対し、技術職への配置転換を命じた。協調性の無い社員に対し、他支店への転勤を行った。支店の統廃合等で余剰人員が生じた為、特に仕事の無い部署を新設し、そこに異動させた。

 

いずれも人事権の発動となりますが、実際に本人から退職願が提出されたとしても、労働争議に発展する可能性が極めて高い事例です。

この場合、仮に本人から退職の申し出があったとしても、会社側がそう仕向けたとされた場合、解雇と同様に取り扱われかねません

 

中でも、配置転換は会社内でもよく行われる人事異動でもある為、争いが生じやすいものになります。一般的には、就業規則の中に「業務の都合により、配置転換を命じることができる。社員は正当な理由なくこれを拒むことはできない。」と記載されており、会社が行う異動命令の法的根拠にもなっています。

 

ただし、現実に配置転換を行う場合は

 

①就業規則等で命令条項が記載されていること

②業務上の必要性があること

③本人の職業上・生活上の不利益に配慮して行うこと

 

の三点を考慮しなければなりません。例えば、業務上の必要性が乏しかったり、あるいは本人が受ける不利益が重大である場合は、人事権の濫用として配置転換命令が無効となる場合もあります。

 

特に、就業場所や職種が初めから限定されて雇用されている場合は、社員の同意なく行われた配置転換命令自体が無効とされるケースが多々あります。(西村書店事件・新潟地裁・昭和六三年一月一一日決定、直源会相模原南病院事件・最高裁二小・平成一一年六月一一日決定等)

 

大切なのは、配置転換の必要性を社員に如何に納得してもらえるか、に集約できます。詳細な事前説明は必須でしょう。少なくても安易に配置転換を行うべきではありません。