多くの企業では、就業規則の服務規程に、服装や頭髪に関する規定があるかと思います。業務内容によっては、厳格なドレスコードを定めている企業もあるでしょう。

一方、憲法第一三条では、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定されています。「公共の福祉に反しない限り」、つまりは他人の人権に迷惑をかけなければ、個人の自由は尊重される、と言うことです。

それでは、労働者の髪の色や型、容姿、服装などについて、憲法の規定を根拠に無制限に自由にすることが認められるのでしょうか。

企業には、企業内秩序を維持・確保するため、労働者に必要な規制、指示、命令等を行うことが許されるとされています。ただし、憲法の保障があるため、無制限に行うことはできません。

「企業内秩序の維持」を名目として、労働者の自由を制限するためには、

 

①制限を行うことの必要性

②制限を行うこと自体の合理性
  ③手段方法としての相当性

の三つについて、特段の配慮をしなければなりません。
①と②は一体である、と考えていいでしょう。例えば、営業職に従事している労働者であれば、髪型や色をある程度限定的にするのは、やむを得ません。業務上の必要性があるからこそ、制限に合理性が生まれる、と言うことになります。
③に関しては、制限を行う場合には、就業規則等のルールに則って行う必要がある、と言った意味になります。

「社会人なんだから、相応の常識と言うものがあるだろう」と思われる方が多いかと思います。
ただ、現実には「そんな馬鹿な・・・」と思われるようなことで争いになっているのが現状なのです。

過去に争われた裁判例を御紹介致します。

 

東谷山家事件

(福岡地決 平成九年一二月二五日)

【概要】 トラック運転手として雇用された労働者が、頭髪を黄色に染色。何度注意しても改めず、ついには取引先からも苦情が出ることに。始末書の提出を求めたがそれすらも拒否をしたので、就業規則に基づき諭旨解雇処分とした。

 

【判決】 労働者側の勝訴。頭髪の色を自然色にしなければ、企業秩序が維持されない」と言う理由は、合理性が無い。よって、解雇は無効。

 

イースタン・エアポートモータース事件

(東京地判 昭和五五年一二月一五日)

【概要】 ハイヤー運転手が口ヒゲを生やしたことで、ハイヤーに乗車できず、事業所内に待機することを命じられた。会社の乗務員勤務要領には、「ヒゲを剃ること」が規定されていた。

 

【判決】 労働者側の勝訴。乗務員勤務要領の「ヒゲを剃ること」とは、お客に不快感を生じさせる「無精ヒゲ」とか「異様、奇異なヒゲ」を指しており、口ヒゲはこれには当たらず、個人の自由を制限する合理的理由が無い。よって、企業が発した待機命令は無効。

企業が頭髪や服装に、望ましい基準を設けることは、企業秩序を維持する上で必要不可欠です。
大切なのはその制限の必要性を労働者に理解してもらうことです。「常識」だけでは労働者の自由は制限できませんので、

 
注意して下さい。