社会保険と労働保険の適用範囲

同列に並べられる社会保険と労働保険ですが、その適用範囲には大きな相違があります。

 

<社会保険の適用事業所>

-法人の場合-

事業の種類にかかわらず、1人でも会社に使用されている人がいること。
注意しなければならないのは、「会社に使用されている人」とは労働者に限らず、役員の方も含まれます。
したがって代表 取締役1人だけの会社であったとしても、適用事業所となります。

-個人の場合-

一定の業種(理容・美容・飲食店業等以外)の事業所で、5人以上の労働者がいること。
個人事業の場合、仮に労働者が4人以下の場合は、任意で加入することが可能です。
なお、理容・美容・飲食店業等の業種の個人事業に関しては、労働者の人数に関係なく任意加入となります。

 

 

<労働保険の適用事業所>

原則として労働者を1名以上雇用していること。(農林水産業で個人経営かつ労働者数5人未満の事業所は任意適用となります。)

ポイントはあくまでも「労働者」としている点です。 労働者にはパートタイマーやアルバイト、全てを包括します。

よく「雇用保険の加入対象者がいなければ、労働保険には加入しなくても問題無い」と誤解されているケースがあります。 確かに雇用保険には一定の加入要件(1週間の所定労働時間が20時間以上等)があり、その要件を満たしていない場合 は加入することができません。

しかし、労災保険に関しては要件がありません。 そもそも労災保険には「加入」と言う概念がありません。あるのは「労働者」か、もしくは「役員」かの違いだけです。 労働者性がある段階で、アルバイトやパートタイマー等、名称にかかわらず適用対象になります。 入社したばかりで給与がまだ支給されていなくても同様です。

したがって、雇用保険の対象者がいないような会社であったとしても、労働保険は適用しなければならないケースが生じますので、注意が必要です。

 

 

<建設業の労働保険>

建設業における社会保険は他の業種と同様ですが、労働保険は二元適用と言って、他の業種とは若干取り扱いが異なります。

労災保険と雇用保険を個別に取り扱うばかりか、労災保険に関しても建設現場に適用する現場労災と、営業や経理・総務 と言った会社の基幹業務に適用する事務所労災に区分します。

ただし、現場労災に関しては元請事業主のみが適用することになり、労働保険料に関しても元請事業主が負担することに なります。 したがって、建設現場で発生した労災事故については、元請事業主で適用された現場労災にて保険給付を受けることになります。

一方で下請事業主については、原則として事務所労災と雇用保険のみが適用されることになります。 ただし、事務所労災の対象であったとしても、建設現場内において作業に従事していた最中に起こった事故については、 現場労災として取り扱われます。

例えば、設計担当者が打ち合わせの為に現場に行った際に起こった労災事故であれば、打ち合わせ時の事故として事務所 労災の対象となりますが、打ち込まれた杭の確認等で穴を掘っている最中に起こった事故については、作業中の事故とし て現場労災が適用されることになります。

 

 

<快適な職場環境の整備の為にも>

社会保険・労働保険と言った、公的保険の整備は、安心かつ安全な職場環境を形成するためにも必須です。 保険関係の適用対象者の有無の確認を含め、迅速な対応が求められます。

また、保険事故が発生した際における適切な手続は、労働者本人はもちろん、その家族の生活にも影響します。

当事務所では迅速かつ確実な手続をお約束いたします。